風土計

岩手日報

聞き慣れない名前だが、ニオブという金属がある。主に製鉄の添加剤として使われているが、脇役的な存在

▼この金属、本県への誘致を目指す国際リニアコライダー(ILC)では主役として期待される。心臓部である加速空洞の材料となるからだ。空洞を極低温に冷却、超電導状態にして電子と陽電子を加速させる

▼茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、それら装置に関する技術開発が進められている。ILCは地下の長大なトンネルでビッグバンと同様の状態をつくり、宇宙誕生の謎に迫るのが狙い

▼世界最先端の研究と聞けば、想像も及ばない世界と思ってしまう。しかし、その実験装置は身近にある技術の積み重ねだ。ニオブを加工する際のプレス成形や溶接は、中小企業でも関われるレベルという

▼一関商工会議所が募集した視察団が先日、つくば市を訪れた。KEKの吉岡正和名誉教授は一行を前に「皆さんの会社が持っている技術を、どこかに生かせるかもしれない。遠慮なく相談してほしい」と呼びかけた。技術開発のヒントはどこにあるか分からないからだ

▼小惑星探査機「はやぶさ」の開発に町工場が貢献したように、宇宙の成り立ちを探る実験に、地場のものづくりの技が生かされるかもしれないと思うと夢が広がる。