次世代加速器の「悲願」官民で歓迎 候補地、東北に一本化

日本経済新聞

  日本の研究者らが23日、次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の建設候補地を東北の北上山地(岩手、宮城県)に一本化したことで、東北では歓 迎ムードが一気に広まった。関係者は地理的な優位性に加え、東日本大震災からの復興を強調した誘致活動が一定の成果をあげたとみている。 最終的な決定はこれからだが、誘致の具体的な準備が今後、加速する。

 「20年来の悲願が達成された」。かつて岩手 県職員として誘致にかかわった勝部修・一関市長は感慨深げに振り返った。岩手県の達増拓也知事 も「東北の人々にとって、未来への希望を感じさせる大きなニュース」とコメント。岩手県ILC推進協議会の元持勝利会長も「東北の復興加速に大きな意味を 持つ」と述べた。

 岩手県によると、誘致を競った九州・脊振山地に比べ、北上山地は「工期・コスト」面で勝り、地質面の評価が北上山地63対脊振山地37と大差だったとされる。宮城県の村井嘉浩知事も「(今後、政治力で九州になる可能性は)ないと思う」と強調した。

  東北ILC推進協議会はILCの建設開始から30年で4兆3000億円の経済波及効果が生まれ、25万人の雇用を生むと試算する。この日、 福島県郡山市で開かれた講演会でも吉岡正和東北大・岩手大客員教授は、原子核物理学や超電導、がん治療機器などの研究の突破口としての役割に言及。「自動 車や日用品など生活密着産業への活用も進む」とした。

 村井知事は「米国のシリコンバレーのような新たな産業を興せ る都市を構築できれば、東北発の産業が日本、世界を動かしていく」と将来像を描く。その実現へ、岩手県も「最終的な建設決定は数年先になっても、事前にで きる準備作業に取りかかる」(大平尚・首席ILC推進監)という。

 まず環境アセスメントの事前調査に着手する。7 月に設置した「医療」「教育」「まちづくり」「産業振興」のワーキンググループも始動。例え ば、研究に関連して海外から訪れる外国人研究者の家族などを考慮して、外国人子弟の教育のためにインターナショナルスクールを造るのか、通常の小中学校で 受け入れるのかなどの検討を行う。

 研究者へのサポート体制の検討も不十分とされ、地元と協力した支援体制づくりが急がれる。国際間の費用負担などでも課題が残る。東北ILC推進協議会代表を務める里見進・東北大総長は「オールジャパンで誘致したい」と強調している。