国際リニアコライダー:候補地、北上山地に決定 自治体や経済団体、祝福 実現へなお課題山積 /岩手

毎日新聞

  「国際リニアコライダー」 (ILC)の国内建設候補地として北上山地が決まったことを受け、誘致に取り組んできた自治体や団体は喜びを表し、奥州市などでは祝福の横断幕を掲げた。 ただ、巨額な建設費への懸念から政府は誘致を決めておらず、建設実現はまだ遠い。誘致活動の強化や、ILCの意義について広く国民の理解を深める取り組み が必要だとの声も上がっている。【金寿英、浅野孝仁】

構想では、奥州市から一関市、宮城県気仙沼市に至る地下100メートルに、全長31〜50キロの素粒子実験施設を建設する。建設費は10年間で約8300億円に上る見通し。

候 補地のライバルだった九州の脊振(せふり)山地と比べ、北上山地は地形が優位で、地上から加速器につ ながるトンネルを短くでき、地下水の排水も容易など、工期の短縮が可能。近くにダムがないなどで許認可手続きも少ないと見込まれ、候補地を選定したILC 戦略会議は「技術的観点で北上山地は大きく優位」と結論付けた。ただ、外国人の研究者や家族の受け入れの面では、大都市の福岡に近い脊振山地に軍配を上げ た。

経済団体などで組織する県ILC推進協議会の元持(もともち)勝利会長は「国内外の研究者らが集まり、 経済の活性化や人材育成につながる」と歓迎。同協議会の玉山哲(さとし)理事は「経済効果は70兆円という試算もある」と期待する。一関市も市役所に「祝  ILC国内候補地 北上高地に決定」と書いた横断幕を掲げた。勝部修市長は「ILCは世界の財産。岩手には(世界遺産の)平泉という財産もある。二つを 街づくりに生かしたい」と語った。

一方、日本学術会議の検討委員会は今月6日、建設費や研究者確保に課題が残るとして「誘致は時期尚早」 との見解を表明。県の大平尚(おおだいらひさし)首席ILC推進監は「誘致に対する責任も感じる。追加の地質調査などを進め、国に建設を要望する」と語っ た。金ケ崎町の高橋由一(よしいち)町長は「今回の評価は最終決定ではない。政府への働きかけなどに岩手、宮城両県や関係市町村と取り組みたい」と慎重姿 勢を示した。

岩手大学の藤井克己学長は「科学技術の予算が限られる中、全ての科学者の間でILCの優先度は高くない。基礎科学を育てるうえでもILCが必要だと、オールジャパンで理解を深める努力が必要」と指摘した。

==============

 ◇ILC誘致を巡る動き◇

1991年   高エネルギー加速器研究機構(KEK)などの地質調査に協力開始

2003年   県が北上山地周辺の地質を独自調査

2009年4月 東北経済連合会、東北大学などと「東北加速器基礎科学研究会」を設立

2011年6月 東日本大震災を受け、県は復興のシンボルとして「国際科学技術研究特区」構想を国の復興構想会議で提言

2012年4月 県ILC推進協議会発足

2013年1月 建設候補地選定のILC立地評価会議設置

2013年4月 県ILC推進協議会がスイスの欧州合同原子核研究所(CERN)を視察

2013年8月 北上山地が建設候補地に選ばれる