ILC候補、脊振外れる コストがネック 

佐賀新聞

巨 大加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の計画を推進する日本の研究者らは23日、国内の建設候補地に岩手、宮城両県にまたがる北上山地を選んだ と発表した。誘致に名乗りを上げていた佐賀、福岡両県の脊振山地は、ダム湖や都市部の下を通過する点がネックになり、北上山地に比べてコストと工期がかさ むと判断された。

研究者でつくる「立地評価会議」の共同議長を務める九州大の川越清以教授、東北大の山本均教授らが東京大で会見し、選定理由や経緯を説明した。

同会議は加速器を納める約50キロの直線トンネルを建設できるかなどの「技術的観点」と、世界から集まる研究者や家族が快適に活動できる環境が整うかの「社会環境」の観点から評価を進め、全会一致で「北上山地が最適」と結論づけた。

選考では、社会環境の評価は脊振山地がやや優位だったが、技術評価で下回った。項目ごとの評点をまとめた結果は、技術評価(100点満点)が北上の68点に対し、脊振は46点にとどまった。

脊振山地については、トンネルが北山ダムと嘉瀬川ダム、唐津市の一部市街地の下を通る点がリスク要因とされた。さらに、地形の関係で地上から地下までのアクセストンネルが北上山地よりも長くなり、コストの高さや工期の長さ、排水の難しさも指摘された。

川越教授は選定結果について「十分な自信をもっている」と述べた。今後は、北上山地に合わせて具体的な設計に移る。

た だ、文部科学省は今回の結果を「参考」にとどめる考えで、誘致の是非や候補地はあらためて判断するとしている。文科省から、日本に誘致するべきか学術 界の意見を聞かれた日本学術会議は、巨額な費用の分担など不確定な要素が多く、「誘致は時期尚早」とする見解をまとめている。

【評点】(100点満点)

▽技術評価

北上山地 68点

脊振山地 46点

▽社会環境基盤評価

北上山地A 60点

北上山地B 51点

脊振山地A 63点

脊振山地B 55点

※必須要件は満たした上で、プラスアルファの部分を点数化。社会環境基盤評価は、それぞれ2カ所(A、B)を想定した。