「佐賀にILCを呼ぶことはできなかったか……」。宇宙誕生の謎に迫る超大型加速器「国際リニアコライダー」(ILC)を巡り、計画を推進する研究者組織が国内建設候補地を正式発表した23日。候補地が岩手・宮城両県の北上山地に決定すると、佐賀・福岡両県の脊振(せふり)山地への誘致を目指してきた佐賀の関係者からは落胆の声が上がった。【田中韻】
古川康知事をはじめ県の担当職員、県内に四つあるILC推進協議会の関係者らは県庁の一室で、研究者組織の記者会見の様子をネット中継で見守った。
唐 津推進協議会の宮島清一会長は「ILCは非常に精密な研究で、どこでもできるものではない。佐賀に呼 べないのは残念」と肩を落とした。今年2月に協議会を発足させ、唐津市内で講演会を主催するなど、市民啓発に取り組んできた。宮島会長は「ILCによる経 済効果より、知的財産の裾野が広がることに意義がある。九州での実現は遠のいたが、国内でできるよう応援したい」と切り替えた。
また、古川知事は報道陣の取材に「今回のILC誘致は、科学に対するいい気づきを与えてくれた。県民に科学への理解を求める活動を続けていきたい」と述べた。
県 は2011年から、組織的に誘致活動をスタート。今年2月には農林水産商工本部に専任組織「ILC推 進グループ」を設け、国などへ要望活動をしてきた。また、県商工会議所連合会を中心に「ILC県推進協議会」が発足し、市民の関心を集めようと啓発活動に 取り組み、誘致実現に向けて機運を高めてきた。
ILC推進グループの担当者は「脊振山地が劣っていた理由や課題などを精査し直し、今後の科学啓発につなげてたい」と述べた。