ILC計画は、建設費だけでも8300億円とされる巨額の費用をどう賄うかが大きなハードルだ。それだけに、見込み違いによるコスト増や工期の遅れは、どうしても避けたいという思いがある。今回の選考では、その点の懸念が脊振山地のマイナス評価につながった。
脊振山地は、トンネルがダム湖の近くを通るため、ダムの機能保全の点から許認可手続きが難しい上、止水のためのコストもかさむ。市街地の下も通り、認可に時間がかかってしまう点も問題視された。
さらに、地形の関係でアクセストンネルが長くなるのも大きかったようだ。研究者は「これだけでも施工期間が2年近く長くなる」としており、工期の長期化に伴って不確定要素が増すリスクは受け入れがたかったのだろう。
一方の北上山地は、許認可に伴う困難や特殊工法が必要になる箇所は見当たらないという。ただ、それぞれの候補地の建設コストの試算は明らかにされなかった。脊振誘致の関係者は今回の評価に割り切れない思いを抱いており、納得させる明確な説明が求められる。