【解説】ILC脊振落選 工期長期化懸念

佐賀新聞

ILC計画は、建設費だけでも8300億円とされる巨額の費用をどう賄うかが大きなハードルだ。それだけに、見込み違いによるコスト増や工期の遅れは、どうしても避けたいという思いがある。今回の選考では、その点の懸念が脊振山地のマイナス評価につながった。

脊振山地は、トンネルがダム湖の近くを通るため、ダムの機能保全の点から許認可手続きが難しい上、止水のためのコストもかさむ。市街地の下も通り、認可に時間がかかってしまう点も問題視された。

さらに、地形の関係でアクセストンネルが長くなるのも大きかったようだ。研究者は「これだけでも施工期間が2年近く長くなる」としており、工期の長期化に伴って不確定要素が増すリスクは受け入れがたかったのだろう。

一方の北上山地は、許認可に伴う困難や特殊工法が必要になる箇所は見当たらないという。ただ、それぞれの候補地の建設コストの試算は明らかにされなかった。脊振誘致の関係者は今回の評価に割り切れない思いを抱いており、納得させる明確な説明が求められる。

巨大加速器 候補地に北上山地 研究チーム、文科省「誘致、改めて判断」

SankeiBiz

  宇宙の始まりを探る次世代の巨大加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の計画を推進する日本の研究者らが23 日、東京都内で記者会見し、国内の建設候補地として岩手・宮城両県の北上山地を選んだと発表した。ILCが具体化すれば北上山地は国際的に有力な候補地と なり得るものの、文部科学省は研究者による今回の選定結果を「参考」にとどめる考えで、誘致の是非や候補地は改めて判断するとしている。

候補地は北上山地と、佐賀・福岡両県の脊振(せふり)山地が競い合っていた。研究チームは専門家8人で構成する「立地評価会議」で審議。脊振山地はトンネルがダム湖や都市部の下を通ることがリスクと評価されたほか、近くに複数の断層があることも懸念材料とされた。

一方の北上山地はトンネルにアクセスしやすく、工期や費用などに優位とされ、東日本大震災後の変動も支障はなく「候補地として最適」とされた。評価会議の共同議長を務める川越清以九州大教授は「結果には十分な自信をもっている」と述べた。

ILCは直線トンネルに設置する加速器で長さは約30キロ。電子と陽電子を正面衝突させ、宇宙誕生直後を再現する。将来は50キロの延長も見込まれている。

文科省から、日本に誘致すべきか学術界の意見を聞かれた日本学術会議は、巨額な費用の分担など不確定な要素が多く「誘致は時期尚早」とする見解をまとめている。