脊振落選、不満タラタラ ILC誘致、第2ラウンドへ 福岡・佐賀

産經新聞

 ■「割り切れない気持ち…」 大逆転になお望み

国 際リニアコライダー(ILC)建設候補地として研究者組織「ILC立地評価会 議」が北上山地(岩手県)を最適とする評価書を決定したことにより、脊振山地(福岡、佐賀両県)での1兆円プロジェクトは一気に遠のいた。熱心に誘致活動 を続けてきた福岡、佐賀両県の関係者は不満タラタラだが、完全に夢が潰えたわけではない。政府の最終決定での大逆転に向けた第2ラウンドは今始まったばか りだ。(田中一世)

「意外な結果で驚いてます…。国内外の研究者や家族に快適な環境を提供するには生活環境の整備状況などがもっと比較検討されなければならない。政府はさまざまな角度から総合的に判断していただきたい」

福岡県の小川洋知事は23日、記者団に悔しさをにじませた。佐賀県の古川康知事も「割り切れない気持ちだ。早くきちんとした説明を受けたい」と語った。

脊 振への誘致活動を続けてきたILCアジア-九州推進会議代表の松尾新吾・九州経済連合会名誉会長(九州電力相談役)は、九州大の有川節夫総長と連名で 「想定していない結果で驚いている。地震の頻度や社会的観点などももっと検討されなければならず、国が改めてさまざまな角度から検討されることを要望す る」という悔しさ丸出しのコメントを発表した。

とはいえ、国内候補地を最終決定するのは政府であり、ILC立地評価会議には権限はない。

下村博文文部科学相は7月16日の記者会見で「研究者が『この場所がよいのではないか』と考えてもそれで決定ではない」と述べるなど、立地評価会議の評価書は参考にすぎないとの考えを重ねて表明してきた。

しかも内閣府の特別機関である日本学術会議(大西隆会長)は、あまりに巨額な負担を伴うだけに「誘致判断は時期尚早」と慎重姿勢を崩していない。

ILC計画の旗振り役である東京大の山下了准教授は「科学的、学術的観点で決めるべきであり、私たちの評価内容に間違いがない限り、政府にひっくり返されることはない」と自信を見せるが、過去には覆されたケースもある。

平 成14年には、国際熱核融合実験炉(ITER)の国内候補地選定をめぐり、政府は、茨城県那珂町(現那珂市)が最適とする研究者評価を覆し、青森県六ヶ 所村を選んだ。最終的に仏カダラッシュに決まったが、政府が研究者評価を参考意見の一つとしか捉えていない証左だと言える。

ということは、政府の最終決定で脊振が再浮上する可能性もある。九経連の担当者は「仮に今回の評価に非の打ち所がなかったとしても可能性は残されている。政府への働きかけは続けたい」と語る。

ただ、ILCについては首相をはじめ政権中枢が冷淡だという現実もある。

研究者組織が弾いたILC建設費は8300億円。関連施設を含めると優に1兆円を超える。研究者グループは「半分は立地国が負担し、残りは他国」というが、他国が負担する保証はどこにもない。

ノーベル賞級の大発見が期待できるそうだが、核融合などと違い、成果を実社会にフィードバックしにくいことも政府を及び腰にさせる要因となっている。

これに加えて北上山地は、安倍晋三首相率いる現政権幹部が忌み嫌う生活の党の小沢一郎代表の地元でもある。立地評価会議は政府の「やる気」を自ら削いだと言えなくもない。

逆に言えば、政府を前向きに転じさせる「プラスα」を打ち出せれば、大逆転があってもおかしくはないということだ。それには福岡、佐賀両県だけでなく、オール九州の政財官界が結束して知恵を出し合う必要があるだろう。