【解説】 「山登り」まだ続く

胆江日日新聞

 

 

 ILCの国内候補地が北上山地に決定した。今後、詳細な設計が進められるとともに、政府間交渉などにも着手しなければ建設は実現しない。登山に例えるなら、途中の山小屋にたどり着き、ひと息ついたにすぎない。頂上はまだまだ「先」である。
今回の候補地選定は日本に2カ所あった候補地を絞り込むものだったが、これまで海外に数カ所あった候補地は経済事情などの影響で、立ち消えとなった。国内候補地の決定は、世界で唯一の建設候補地の決定と同義だ。
今後は、国際的な物理学の研究者組織リニアコライダー・コラボレーション(LCC)が中心となり、北上山地の地形や地理要件に合わせたILC施設の設計を始める。これまで架空の場所をイメージしていたが、より具体的な施設の姿が描かれることになる。
一方、建設費用や国際研究所の設置などに関しては、世界の国々との政府間協議が必要となる。最終的な建設のゴーサインは、関係国間協議の行方にかかってい るが、まずは日本政府が協議開始に向けた意思を示さなければ始まらない。そうした意味で、まだまだ頂上への道は続くのである。
今回の評価結果の中にはこのような一文がある。
「北上サイト(北上山地)における中央キャンパスは、仙台・東京へのアクセス利便性を有し、研究・生活環境に優れる新幹線沿線の立地を強く奨励する」
ILCが建設される想定エリアの最寄り新幹線駅は水沢江刺と一ノ関。「国際研究所に二つも新幹線駅があるようなものだ」。北上山地への誘致を推進してきた関係者の一人はこう語る。
1985(昭和60)年3月14日に開業した水沢江刺駅。住民の熱意によって生まれた請願駅が、世界最先端となる国際研究所の玄関口になり得る可能性を十 分に秘めている。ILCの国際設計が進むのに並行し、地元レベルではILCを核とした地域ビジョンを描くことが求められてくる。
地域住民と産学官がともにILCを核とした地域づくりに携わっていくことになる。しかもこれから描こうとする都市像は、外国人も居住する国際学術都市という、少なくともこの地域の多くの人が経験したことのない都市の姿だ。
「本当に大変なのはこれからだ」。誘致関係者は口をそろえる。道半ば、頂上はまだはるか向こうだ。兜の緒は決して緩めてはいけない。