候補決定 岩手では安どの表情

NHK

最先端の素粒子実験施設、ILC=国際リニアコライダーを日本に誘致する場合の建設地に岩手県の北上山地が決まったことについて、岩手県の担当者は、ほっとした表情を見せていました。

岩手県庁では「ILC立地評価会議」の23日の発表を担当者6人がインターネット中継で見守りました。
そして、研究者が「北上山地が候補地にふさわしい」と発表すると、担当者からは「よし」などと声が上がり、ほっとした表情を見せていました。
ILC 誘致を担当している県政策地域部の大平尚首席ILC推進監は「北上山地が認められてほっとしています。しかし、学術会議では時期尚早という判断があるので 政府が決定できるように調査を積み重ねて働きかけていきたい。また、市民にも理解を得られるように説明していきたいです」と話していました。

奥州市長「大きな朗報」

岩 手県奥州市の小沢昌記市長は「北上山地が科学者から評価され選ばれたことは、東日本大震災からの復興を目指している東北にとって大き な朗報であり、候補地を抱える自治体として念願がかない、非常に喜ばしく思っています。計画の実現には政府が日本誘致を表明するなど手続きが必要になるの で、引き続き、誘致に向けてこれまで以上に取り組んでいきたい」とコメントを出しました。

福岡県知事「いささか驚いている」

一方、候補から漏れた、福岡と佐賀にまたがる脊振山地の誘致の関係者からは落胆や戸惑いの声が出ています。
このうち、福岡県の小川知事は「いささか驚いている。東北では国による活断層の調査・評価がまだ行われていない。安全・安心である環境を提供するという観点からもっと検討がされなければならない」とするコメントを発表しました。

福岡の若手経営者は戸惑い

福岡市博多区のIT企業のオフィスでは、誘致の署名活動を行ってきた若手経営者団体のメンバーから、ため息が漏れました。
メンバーの1人は「東京へのアクセスが良いと言われてもね」などと話し、戸惑った表情を見せていました。
立地評価会議の会見のインターネット中継で、北上山地が選ばれた理由について、「活断層との位置関係などで優位性が認められ、大型ダムや大都市などの人工物によって立地を制限される可能性がない」などと説明されると、メンバーはメモを取りながら聞いていました。
九州へのILC誘致を実現する会の岩木勇人事務局長は「最初から北上に決めていたという感じがしてしっくりしない。まずは、きょうの話をしっかり理解して今後の動きを決めていきたい」と話していました。

佐賀県の反応

福岡県と共に脊振山地への誘致活動を行ってきた佐賀県内では、候補地から漏れたことを残念に思う声が上がるとともに、日本への誘致に向けて、今後もこの計画を応援していきたいという声も出ていました。
佐賀県庁では、古川知事や担当の職員、県内の商工団体の関係者などおよそ30人が会議室に集まり、東京大学で行われた記者会見の様子をインターネットを通じて見守りました。
国内の候補地に岩手県の北上山地が決まったと発表されると、古川知事は腕を組んで前に乗り出し、残念そうにモニターを見つめていました。
こ のあと、古川知事は取材に対し、「ひと言で言えば残念だというほかない。詳しい理由が分からないので、福岡県と共に詳しい説明を聞いて、まずは今回の決定 の内容を理解したいが、そのうえで、ちょっと違うのではないかと思うことについては日本学術会議や政府に意見を申し上げることもあり得る」と述べ、決定の 理由に納得できない部分がある場合は、意見を表明していきたいという考えを示しました。
また、佐賀市の佐賀西高校では、スイスにある国際的な実験施設でも研修を受けたことがある物理教諭の野田亮さんが、授業の休み時間にインターネットを通じて発表の内容を確認しました。
野田さんは、「残念な結果ですが、日本に誘致されれば、日本の子どもたち全体に良い影響があると思うので、引き続き頑張ってもらいたいです」と話していました。
ま た、佐賀西高校で、素粒子物理学の分野への進学を目指している3年生の川原希彩さんは「佐賀が世界の中心となって研究をして行けたらそれはすごいことだと 思っていたので残念ですが、日本で研究が出来るのならそれはすばらしいことだと思うので、これからもこの計画を応援したい」と話していました。

宇宙の謎に迫る実験施設、国内候補地は北上山地

読売新聞

宇宙誕生の謎に迫る大型実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の国内候補地を検討してきた科学者組織「ILC立地評価会議」は23日、北上山地(岩手県、宮城県)が建設候補地として最適とする評価結果を正式に発表した。

地盤に問題がないうえ、多くの科学者が集まる研究環境を整えやすいなど、巨大実験施設を作るのに有利な条件がそろっていると判断した。

23日、東京都文京区の東京大で記者会見した同会議共同議長の山本均・東北大教授は「北上山地は、施工上、運用上のリスクが少なく、(九州の脊振(せふり)山地に比べて)大きく優位にあると結論した」と述べた。

ILCを巡っては、震災復興の一環として東北地方が推す北上山地と、脊振山地(福岡県、佐賀県)が誘致を競い、同会議が一本化作業を進めてきた。