ILC候補地は岩手北上山地

NHK

最先端の素粒子実験施設、ILC=国際リニアコライダーを日本に誘致する場合の建設地に、岩手県の北上山地が決まりました。
ILCについては、国際的な費用の分担方法などがこれから明らかになるため、日本が実際に誘致するかどうか決まるのは、数年先の見通しです。

ILC=国際リニアコライダーを日本に誘致する場合の建設地には、▽岩手県の北上山地と、▽福岡県と佐賀県にまたがる脊振山地が候補となっていて、関係する自治体が盛んな誘致活動を行ってきました。
この2つの候補地のうち、どちらを選ぶかの選定作業は、国内の物理学者でつくる「ILC立地評価会議」がことし1月から進めてきましたが、岩手県の北上山地を選ぶことを決め、23日、発表しました。
ILC=国際リニアコライダーは、2020年代半ばの完成を目指して計画が進められている巨大な素粒子実験の施設で、日本が有力な建設の候補地となっています。
国内に建設されれば大きな経済効果が見込まれる一方、8300億円とされる建設費の少なくとも半額を負担しなければなりません。
このため、国から誘致について諮問を受けた日本学術会議も、「国際的な費用の分担方法など決まっていないことが多く、現時点で誘致に踏み切るのは、時期尚早だ」とする慎重な見解を公表していて、日本が実際に誘致するかどうか決まるのは数年先の見通しです。

ILC・候補地決定までの経緯は

ILC=国際リニアコライダーの建設候補地の検討は、15年ほど前から、国内外の研究者を中心に進められてきました。
当初、国内の候補地には10か所余りが挙げられましたが、3年前の平成22年に▽岩手県の北上山地と▽福岡県と佐賀県にまたがる脊振山地の2か所に絞り込まれました。
最終的な候補地を選ぶにあたり、まず、行われたのが、現地での詳しい地質調査です。
ILCを建設するには、地下に長さ30キロの直線のトンネルを掘る必要があるため、平成23年度の補正予算で国が調査費をつけて、それぞれの地域でボーリング調査などが行われました。
こうした調査結果を基に、候補地の選定作業を進めたのが「ILC立地評価会議」です。
この会議は、国内の物理学者など8人がメンバーとなっていて、九州大学の川越清以教授と、東北大学の山本均教授が共同議長を務めました。
会議はことし1月に設置され、今月までの間に合わせて60回の会合を重ね、「技術評価」と「社会環境基盤評価」という2つの観点から評価を行ってきました。
このうち「技術評価」では、現地で行われた地質調査の結果をもとに▽地盤の安定性や、▽地震を引き起こす活断層までの距離などの検討が行われました。
また、「社会環境基盤評価」では、外国人研究者やその家族が暮らしていく際の生活環境などについて評価が行われました。

ILCとは

ILC=国際リニアコライダーは、2020年代半ばの完成を目指して計画が進められている最先端の巨大な素粒子実験施設です。
地下およそ100メートルに掘った長さ30キロのまっすぐなトンネルの中で、電子と陽電子を光とほぼ同じ速さで衝突させ、宇宙が誕生した直後の状態を作りだします。
それにより、すべての物質に質量を与えたとされる「ヒッグス粒子」の詳細な性質を調べるほか、未知の粒子の探索も進め、宇宙がどのようにできたのか解明を目指します。
ILCが建設されれば、世界中から研究者が集まる国際的な研究拠点となり、最先端の研究成果が期待されるほか、地元に大きな経済効果をもたらすと試算されています。

今後の課題は

その一方で、建設にはおよそ8300億円のコストがかかり、この少なくとも半額を施設を誘致した国が負担することになります。
建設コストには、およそ900億円かかる測定器や土地代、人件費などは含まれておらず、それらを合わせた総額は、1兆円前後に上るとも見られています。
建設後も、運転のための経費が年間300億円を超えると試算されています。
こうした巨額のコストを国際的にどのように分担するかはまだ決まっておらず、計画の実現を目指すうえで大きな課題となっています。