「遠ざかっていない」ILC誘致判断見送り

佐賀新聞

国 際リニアコライダー(ILC)の日本誘致を検討している日本学術会議の委員会は12日、事実上、誘致の是非について判断を見送った。2~3年かけた調 査実施を文科省に提言することを受け、脊振山地への誘致を目指す佐賀県や経済団体は「調査は必要なステップ」「誘致が遠ざかったわけではない」と期待をつ なげる。今月中には別の研究者グループが国内候補地を選定する予定だが、政府が計画を国家事業に据えることは誘致実現の大前提。脊振が候補地に選ばれたと しても、しばらくは誘致の是非の論議に気をもむことになりそうだ。

県ILC推進グループの森満推進監は「会議が指摘している課題はもっとも。不確定要素はクリアにしていくべき」と述べ、学術会議の見解に理解を示した。その上で、2~3年かけた調査を「国家プロジェクトに乗せるために必要なステップ」と捉える。

九 州の自治体で最も早く誘致活動に取り組んできたILC唐津推進協議会の宮島清一会長(唐津商工会議所会頭)は「日本学術会議が計画の意義を認め、慎重 な検討が始まることになったのは大きな前進」と一定の評価。ただ、関心は来週末にも研究者が発表する候補地選定で、「結果次第で誘致活動は大きく変わる。 『九州優位』なら、数年がかりの活動を進めることになるだろう」と述べた。

県内の商議所でつくるILC県推進協議会の井田出海会長(佐賀商議所会頭)は「建設費の国際分担など、政治的な駆け引きもあるのだろう」と推測。「時間をかけ、大いに議論してほしい。現時点で誘致が遠ざかったわけではない」と前向きに受け止めた。

計画を推進する研究者グループは今月中にも国内候補地となっている脊振山地、北上山地の選定結果を公表する。脊振山地が選定されなかった場合、古川康知事は誘致事業から手を引く考えを示している。

ILC誘致「時期尚早」政府に調査提言へ

佐賀新聞

次 世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の国内誘致の是非を議論している日本学術会議の検討委員会は12日、「現時点でゴーサインを出すことは 時期尚早」とする見解でまとまった。計画の学術的な意義については「十分に認められる」と評価しており、政府機関を交え、今後2~3年かけて集中的に調査 するよう文科省に提言する。

検討委は、国内の実施体制や海外主要国の参加見通し、必要経費の国際分担など「不確定要素が少なからずある」と指摘した上で、日本の財政ひっ迫や他の学術分野への影響を踏まえて「現時点では時期尚早」と判断した。

今 後の現実的な対応としては、国際的な協力が得られるかなどの見通しを明らかにするため、「2~3年かけて有識者や政府機関が参加して集中的調査を進め るよう推奨する」「調査と並行して海外の政府機関との予備交渉も進めるべき」とした。文科省は学術会議の意見を踏まえ、誘致の是非を判断する。

こ の日の会合では、計画推進の立場から東京大国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構の村山斉機構長が国際的な情勢やILC計画がもたらす成果などを 説明した。計画が遅れた場合の影響については「ILCを造る技術と情熱を持った人が、例えば20年後にはいなくなってしまうだろう」と述べ、現在の機運の 高まりを生かすよう訴えた。

検討委の家泰弘委員長は「科学者同士の話し合いでは限界がある。次は政府を交え、国際的な情勢などを調査してほしい。その上で、必要があれば、私たちももう一度判断する」と述べた。