ILC誘致へ16日講演会 平泉、増田元県知事講師に

岩手日報

 

 

本県への誘致を目指す国際リニアコライダー(ILC)の講演会「ILCで明日を築くin平泉」は16日午後4時から、平泉町平泉の平泉ホテル武蔵坊で開かれる。

町 民有志でつくる「『ILC誘致と平泉』を考える会」(鈴木和博代表)の主催。講師は増田寛也元県知事が務める。ILC誘致と「世界遺産平泉」と の関連についても講演する予定という。鈴木代表は「ILCが誘致されれば、平泉の文化遺産の価値を世界に発信する好機になる。多くの町民に聞いてもらい、 平泉でも草の根から誘致の機運を高めていきたい」と来場を呼び掛ける。

定員は200~250人で、講演は1時間の予定。入場無料。問い合わせは同ホテル(0191・46・2241)へ。

先進地CERNに学ぶ(2)暮らし/多国籍、多様なニーズ

河北新報

 

 

<郊外で「賃貸」>
フランスの自治体(コミューン)の一つ、トワリーは、スイス・ジュネーブ郊外の欧州合同原子核研究所(CERN=セルン)から車で約10分ほどのところにある。ジュラ山脈の麓に位置する人口約4500の小さな村だ。
「この辺りはジュネーブ市のベッドタウン。CERNや国際機関で働く人が多く、フランス人はむしろ少ない」。加速器を使って基礎科学を推進する高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)の津野総司助教(39)が説明してくれた。
万物に質量(重さ)を与えたとされるヒッグス粒子を研究するアトラス実験に加わり、トワリーに住み始めてから7年目を迎えた。CERNに長期滞在する日本人研究者の中では一番の古株だ。2世帯住宅の1世帯分を借り家族5人で暮らす。
トワリーに限らず、周辺のサン・ジェニやプレブサン・モエンなどフランス側の自治体には、スイスから多くの人が移り住む。物価や家賃が2~3割ほど安いためだ。

<自炊研究者も>
国際機関や多国籍企業が集まるジュネーブ市中心部は特に、深刻な住宅難で住居費が高い。「ジュネーブ市内に住む同僚もいるが、子持ちの世帯はほとんどない」と津野さん。
3人の子どもは、それぞれ自宅近くの公立の小中学校や幼稚園に通う。ジュネーブ市にはインターナショナルスクールが複数あるが、年間授業料は200万~300万円と高い。妻の洋恵さん(39)は「初めから公立学校と決めていた」と話す。
CERNを訪れる研究者の多くは「ユーザー」という立場で、CERN職員ではない。給料は派遣元の大学や研究機関から出ており、家族手当や教育費補助の有無など給料にも開きがあるという。
東欧、アジア、アフリカなどの研究者の中には、アパートの家賃を分担して暮らす人たちが少なくない。ヨーロッパ特有の物価高もあり、外食を控え自炊で節約する若手研究者もいる。

<選択肢に幅を>
世界中から集まる研究者たちは、経済基盤もライフスタイルもさまざま。東北に線形の加速器の国際リニアコライダー(ILC)を造る際の生活環境の整備では、多様なニーズに応える選択肢を幅広く用意する必要がありそうだ。
「この辺の地域は、のんびりしていていい。自由な気風がある」。津野さんは今の暮らしが気に入っている。子どもたちも地域に溶け込み、普段の生活で大きな不便を感じることはない。
CERNは交通アクセスも良好だ。ジュネーブ国際空港から車で10分と近く、数年前にはジュネーブ市中心部と結ぶ路面電車も開通した。ジュラ山脈やアルプスの山並みも望み、研究者たちがあこがれる土地でもある。
東北自動車道や東北新幹線が近くを通る岩手県南部の北上山地も、自然環境や社会インフラは似通った面がある。「東北でも、ジュネーブのように自然に外国人を受け入れるようになってほしい」と津野さんは願う。

[ジュネーブ市]スイスの西端に位置するジュネーブ州の州都。国連欧州本部、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)などの国際機関や非政府国際組織が200以上あり、人口約19万のうち4割以上を外国人が占める国際都市。州内の地下を大型加速器LHCが通る。