研究者の子、教育的確に 岩手知事、千葉で施設視察

河北新報

 

 

超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の岩手県南部・北上山地への誘致に関連し、達増拓也岩手県知事は18日、外国人研究者の子どもの教育環境整備に向けた参考として、千葉市の幕張インターナショナルスクールを視察した。
スクールのポール・ロジャーズ校長が開放的な校舎の構造や、外国語と日本語の授業割合などのカリキュラム内容を説明した。
達増知事は「研究者の子どもたちが学べる環境を何としても整えたい」と語り、ILC誘致が実現した場合は同様の教育施設の整備に取り組む意欲を示した。
幕張インターナショナルスクールは2009年に開校した私立校で、幼稚園と小学校に計321人が通う。うち約6割が帰国子女で、ほかは外国籍。視察には宮城県や東北経済連合会の関係者らも同行した。

官民一体で盛り上げ

読売新聞

 
外国人市民も誘致に一役

「ゴミ収集とか、日常生活に関する多言語ガイドブックがあった方がいいね」
「自治会の仕組みや、病院や銀行の利用方法をどうやって知ってもらうかが課題だ」

奥州市に住むイギリス人やフィリピン人ら6人が、口々にアイデアを披露した。

同 市水沢区のアメリカ人英語講師ビル・ルイスさん(44)らが3月29日、市の国際リニアコライダー(ILC)誘致活動を受け、「世界中から集ま る研究者を受け入れるヒントに」と企画した「外国人市民ILC会議」の一幕だ。20年前、日本人の妻と結婚して移り住んだビルさん自身、来日当初は和式ト イレの使い方に困惑した経験があるという。

市国際交流協会は、この会議で出た意見を基に、外国人が快適に暮らせるよう買い物や医療、交通 などに関する提言書を作成し、19日に市に提出す る。渡部千春事務局長は、「『もし隣に外国人が引っ越してきたら』と、市民に考えてもらう勉強会も企画したい」と張り切る。市は今月、ILC推進室を新設 し、官民一体での取り組みが盛り上がっている。

ビルさんはILC誘致に胸を膨らませる。「シャイな日本人は外国人との交流が得意な方ではない。でも、ILCで多くの外国人を迎えれば、お互いにプラスになる交流が何十年も続くでしょう」

北上山地周辺の自治体は、ILC建設による経済波及効果にも注目している。

野 村総合研究所の試算では、国内の経済効果は建設工事や社会基盤整備、商業やサービス業への波及などで総額4兆3000億円。県内でも1兆 3000億円に上るとされるからだ。一関商工会議所の高橋宏之常務理事は、「人口減少や高齢化を抱える地域が新しく生まれ変わる」と期待する。

一関市の勝部修市長は、県職員時代にILC関連の調査に携わっていた経験を生かし、自ら講演会を企画して市民への説明に駆け回っている。

17 日に藤沢地区で開いた講演会では、独自に作成したILC建設や都市計画の工程表を使い、「外国人向けの案内施設やバイパス整備が急務だ」と訴 えた。10~15日にはスイス・ジュネーブ郊外の欧州合同原子核研究機関(CERN)の県視察団に参加。「CERN訪問が2回目だったのは私だけ」と誇ら しげに笑う。今後も移動市長室などでILCのPRを続けるという。

海外の研究者が来日した場合、家族の居住環境にも配慮が必要だ。県は、外国人の児童生徒が通うインターナショナルスクールの設置を検討しており、18日には達増知事らが千葉・幕張を視察した。

一関市は今年度、専従職員を1人から3人に増員した。研究者には妻の雇用への要望が強いことから、受け入れプランを練る担当者に、新たに女性職員を起用。着任した小野寺順子・政策推進監は、「教育や住まいなど女性の視点を生かしたい」と意欲を語る。

東北の夢を乗せたILC。夏の国内候補地決定に向け、ラストスパートは始まっている。