加速器誘致で研究者ら1万人来日…CERN視察

読売新聞

宇宙誕生の直後を再現する次世代の加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の北上山地への誘致に向けて、岩手県の上野善晴副知事や県内の関係市長、経済団体代表らが11、12日の両日、スイス・ジュネーブの欧州合同原子核研究機関(CERN)を視察した。

日本人研究者らとも懇談し、国際的な研究施設を誘致する際の課題などを尋ねた。

国際的な巨大実験施設の誘致を成功させるため、今後どのような取り組みが必要かを確かめることが視察団の目的。県ILC推進協議会(会長=元持勝利・盛岡商工会議所会頭)が主催し、30人余りが参加した。

11日は、昨年、ヒッグス粒子とみられる新素粒子を発見した、地下約100メートルにある実験設備を見学した。谷藤裕明・盛岡市長は、「スケールが違う。こうしたものを岩手に誘致できれば、子供たちに大きな夢を持ってもらえる」と興奮気味に語った。

12 日は、リニアコライダー研究を推進する国際組織の代表リン・エバンス氏らCERNの研究者たちと懇談。元持会長が「北上山地は岩盤が安定し、 東日本大震災でもびくともしなかった。ILC立地に適している」と訴えると、エバンス氏は「次の加速器建設は日本にぜひリーダーシップを取って欲しい」と 強調した。

別の研究者は、外国人研究者が安心して暮らせる条件として、「住居を容易に確保でき、子供を通わせられる幼稚園や学校が整い、配偶者が雇用先を見つけられることが重要だ」と要望した。

小沢昌記・奥州市長は「外国人研究者の生活基盤を整えるため、自治体としてできることをやっていきたい」と話した。

ILCは長さ30キロ・メートル以上の地下トンネル内で、電子と陽電子を光速に近い速度で正面衝突させ、宇宙誕生直後の超高エネルギー状態を作り出す施設。CERNの加速器の次世代型となる。総事業費は8000億円が見込まれ、世界に1か所だけ建設される。

ILCを国内に誘致した場合、研究者やその家族計約1万人が来日するとみられ、経済波及効果は大きい。震災からの復興につながるとして期待されている。

国内では、北上山地と、福岡、佐賀県境の脊振山地の2か所が候補地。国内候補地は今年夏にも研究者間で一本化される見通しだ。