ILC、国内候補地一本化へ「今夏正念場」

佐賀新聞

宇 宙の謎に迫る素粒子物理学の次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」構想で、脊振山地への誘致を目指す動きが活発化している。「国内候補地が 一本化される今夏が正念場」との認識が広がっているためで、経済団体による推進協議会が相次いで設立され、佐賀県庁は専任組織を設置した。ただ、ILC は、まだ研究者の構想段階。候補地決定のプロセスは判然としない面もあり、手探りの誘致活動が続く。

2月下旬、文部科学省を訪ねた古川康知事は下村博文文科相と面会、ILC構想を国家プロジェクトに据えるよう直談判した。「省内にワーキングチームをつくり、国際的状況を踏まえて対応していきたい」。文科相から専門チーム設置の考えを引き出した。

ILCは建設費8千億円以上、経済効果は1兆円を超えるとも言われる。世界に1カ所だけの研究施設に付随し、産業集積や国際交流都市の形成、教育効果が見込まれる。

さまざまな波及効果を期待し、経済界も動き出した。2月中旬に九州経済連合会が中心となって推進協議会を設立したのを皮切りに、佐賀県商工会議所連合会 や唐津、佐賀の商議所も協議会を設立。佐賀県庁も専任組織「ILC推進グループ」を設け、産学官で“共同戦線”を張る。

誘 致活動が加速する背景にあるのは、関係者の間でささやかれている「今夏の国内候補地一本化」。脊振山地のほかにも、岩手県が北上山地への誘致を目指し ている。関係者は、国内の素粒子物理学の研究者がつくるILC戦略会議(15人)が5月ごろにまとめる報告書を基に、今夏にも「国が何らかの動きを見せ る」とみている。

ただ、これはあくまで研究者間での動き。戦略会議メンバーの川越清以九大大学院教授によると、建設するかどうかは国際的に「まだ決まっていない」。ある関係者は構想段階での誘致活動を「開催されるか決まっていない五輪を誘致しようとしている状況」と例える。

構 想実現を決めるのは政治判断。県は国家プロジェクト化することが誘致の前提と捉え、国への要望を活動の柱の一つとしている。古川知事による下村文科相 への要望もその一環。8千億円以上と言われる建設費を一国で負担するのは難しく、国家プロジェクトとなった後は国際プロジェクト化を目指す必要がある。計 画が国際的な合意事項となれば、日本は他国の候補地と競合することになる。

構想実現による地域への波及効果は計り知れない。「研究者によ る候補地一本化は、国の候補地決定にも大きく影響する」と県ILC推進グループの森満推進 監。「『あれをやっていれば』と後悔するような事態だけは絶対に避けたい。データ提供や要望活動など、県としてできることに取り組んでいきたい」と気を引 き締める。

ILC誘致へ連携 岩手・宮城両県

岩手日日新聞

推進部会を設立

超 大型加速器・国際リニアコライダー(ILC)の北上山地(北上高地)誘致に向け岩手、宮城両県は14日、岩手・宮城連携調整会議「岩手・宮城ILC推進 部会」を設立した。ILCに特化した、両県初の事務レベルの連携組織。初会合が同日、仙台市の宮城県庁で開かれ、7月に見込まれる研究者による国内候補地 一本化に向け一致結束して誘致活動を進めていくことを確認した。

両県は既に連携調整会議を設置し各施策で連携しているが、国内候補地一本化を控えILC誘致に向けた活動を一層強化しようと、両県の課長級以上による事務レベルの推進部会を立ち上げた。

初 会合には両県の担当者4人が出席。冒頭、岩手県の大平尚首席ILC推進監は「国内候補地一本化に向け東北の政財界、行政、大学一体となった活動が必 要。まずは情報、戦略の共有が一番大事。東北誘致を勝ち取るつもりで頑張っていきたい」と力を込め、宮城県の千葉隆政震災復興政策課長も「世界の中で北海 道を含めた北東地域はどうあるべきか、ILCは先見例となる。今後も協力関係をさらに緊密、強力にしてILCを誘致できるよう取り組んでいきたい」と強調 した。

会合ではILCをめぐる情勢を分析し、情報交換。ILC立地評価会議が進める候補地評価作業への対応、当面の連携活動などについて協議した。今後は月1回程度会議を開き、誘致活動の進め方や具体的内容を協議し、調整を図る。

4 月18日には両県合同で、千葉市の幕張インターナショナルスクールを視察することを決めた。海外の研究者や家族が快適に滞在できる地域づくりを目指 し、先進事例として参考とする。今春に開催される東北ILC推進協議会総会には両県知事出席の方向で調整し、誘致実現の熱意と連携をアピール。3月下旬に は両県を中心に東北一体となり、政府に対しILCの国内誘致、東北誘致を要望することとした。

国内では北上山地と福岡、佐賀両県にまたが る脊振山地の2つが候補となっている。外国人受け入れでは脊振山地に実績があるが、北上山地の優位性について 岩手県の保和衛政策監兼ILC政策監は「空気がきれいで風光明媚(めいび)。環境面で世界に誇れる地域」と語り、宮城県の千葉震災復興政策課長も「北九州 (脊振山地)と比べ岩盤がかなりいい」と説明。両者とも東日本大震災からの復興、経済効果でも大きな意義があると強調した。