復興の土台着々 被災3県知事、現状と課題語る

河北新報

達 増拓也岩手、村井嘉浩宮城、佐藤雄平福島の3県知事は、東日本大震災発生から2年の節目を前に、河北新報社などのインタビューに答えた。復興に向けた 土台づくりに一定の手応えを語る一方、課題として社会基盤の復旧や、住宅再建に向けた人手と資材の不足を挙げた。福島第1原発事故の影響が続く福島の佐藤 知事は、避難者の帰還支援を急ぐ考えを示した。
復興の現状に対し、達増知事は「専門的な人材の不足や財源確保、用地取得の手続きの簡素化が課 題」と指摘した。村井知事は「県震災復興計画通りに進むが、合格点はもらえない。スピードが重要だ」と復興の加速に意欲を見せた。原発事故対応に追われる 佐藤知事は「福島復興再生特別措置法の成立など新生福島をつくる土台ができた」と2年を振り返った。
3県の被災市町村で深刻化する人口流出について、村井知事は「被災者が働く場所を求めて地元を離れている。雇用確保を最優先に取り組む」と述べ、企業誘致を含む雇用の確保を最優先施策に掲げた。
達増知事は、昨年10~12月の沿岸市町村の人口動態で3カ月連続で社会増になったことを踏まえ「流出には歯止めがかかった。地場企業の回復と企業誘致で流れを確かなものにする」と語った。
福島県内では15万人以上の避難が続いている。佐藤知事は「帰還に向けて生活再建や雇用創出、教育と医療の再生に不退転の決意で取り組む」と意気込みを語った。
地域再生に向け、佐藤知事は「事故の風化を防ぐため福島の現状をさまざまな形で発信する」と訴えた。達増知事は復興の象徴に国際リニアコライダー (ILC)誘致を挙げ「岩手にとって『開国』と言えるほどの国際化になる」と話した。村井知事は「仙台空港の民営化や宮城野原公園総合運動場(仙台市)一 帯の広域防災拠点化が柱になる」と語った。

震災2年 岩手・達増拓也知事に聞く 再生へILCを誘致

河北新報

-震災2年を迎える。
「避難、救助、応急対応、復旧・復興へと、被災者はもちろん、県民にとっても大変な日々だった。皆さん、よく歩んできた。失われた命は決して取り戻すことはできない。犠牲になった方々への哀悼が復興の原点だ」
「専門的な人材の不足、財源確保、用地取得の手続きの簡素化が課題。国に対して抜本的な対応を求めていく。自民党政権で復興予算の総額が拡大されたのは改善だ」

-被災した沿岸部からの人口流出の対策は。
「沿岸市町村の社会増減の合計は昨年10~12月、3カ月連続の増だった。流出に歯止めはかかったと思う。地場企業の回復、企業誘致を進め、流れを確かにしたい。ただ自然減が多いので、人口全体としては減り続けている所もある」

-被災者の暮らしをどう再建するか。
「有効求人倍率が沿岸全体で1倍を超えた。緊急雇用創出事業が貢献しているが、本格的な職に就いてもらう方がいい。事業の規模は徐々に縮小していく必要が ある。一方、沿岸に戻りたい、新たに働きたい、と望む人の住居がない。雇用対策と福祉政策を組み合わせ、生活を守っていく」

-まちづくりが遅れているようだ。
「孫子の代まで残す、しっかりしたまちをつくる。丁寧にやって時間がかかる所はあるかもしれないが、地域の未来の世代のためなら納得してもらえると思う」
「地域医療が崩壊しては持続可能なまちにはならない。医者になる若い人に一定期間、人口過疎地の病院勤務を義務付けるような制度をつくるように国に働き掛けたい」

-震災の経験の伝承や風化防止の対策は。
「震災津波の全容と教訓を後世に伝えるため、一般向けの記録誌を今月中に発行する。普通の人がすぐに読み通せるぐらいの分量のものを早くまとめておきたかった」
-震災後の東北の未来像をどう描いているか。
「『平泉の文化遺産』の世界遺産登録と、国際リニアコライダー(ILC)の誘致が復興の象徴だ。平泉の文化もILCも東北が中央政府と力を合わせながら、外国に開かれた形で、地域資源を総動員し豊かさを目指すことで共通している」

-ILCは今夏に国内候補地の一本化が予定される。
「地盤の良さ、経済的効果、外国人研究者の生活環境の良さを示し、(岩手誘致の)説得力を高めていきたい」
「国際研究都市づくりには県ももう少し積極的に関わりたい。岩手にとっては『開国』と言っていいくらい大規模な国際化になると思う」
「国の『海洋再生エネルギー実証実験フィールド(日本版EMEC)』誘致もことしがヤマ場といわれる。ぜひ県沿岸中南部に誘致したい」