From Editor 平泉文化の血筋に期待?

産經新聞

  いま岩手県では、東北全体を巻き込んで、超大型加速器「国際リニアコライダー」(ILC)の誘致活動が熱を帯びている。北上山地(同県奥州市-一 関市)と、福岡・佐賀両県にまたがる背振(せぶり)山脈が候補に挙げられ、夏には国内候補が一本化される見通しで、ヤマ場を迎える。

ILCとはなんぞや。地下に掘った30キロ以上の長いトンネル内で、超高速で電子をぶつけ、発生した素粒子を研究する物理学の実験装置。人工的にビッグバンの状態を作り出すことで、宇宙の起源解明に迫れる…と説明しても、ピンとくる読者は少ないだろう。

誘 致熱の背景には、東日本大震災からの復興に向け、雇用や経済発展につながりそうな国家プロジェクトがILC以外に見当たらないという事情がある。岩手県 はすでに20年前から誘致に乗り出していて、達増(たっそ)拓也知事は「必要に迫られて、地方の側から国家プロジェクトを提供するような格好になってい る。国は主体的にビジョンを示してほしい」と不満ぎみだ。

東日本大震災による岩手、宮城、福島3県の失業者は約11万人(平成23年5 月、厚労省調べ)との数字があるが、以前から高齢化や少子化、人口流出にあえいできた東北にとって、実際の震災の影響は、数字の何十倍だろう。産学官が連 携した「東北ILC推進協議会」の試算によれば、ILCの加速技術を応用した産業が東北一帯に張り付き、30年間で約25万人の雇用を生み出せるという。

さ て、話は千年近くもさかのぼる。日本史に興味のある読者なら、岩手では前九年の役(1051年)で豪族・安倍氏と朝廷の国司が争い、後三年の役 (1083年)を経て、安倍氏の血を引く藤原清衡が、福島から青森にまたがる藤原三代100年の礎を築いたことはご存じだろう。

おしかり覚悟でざっくり言えば、藤原三代が頼朝に滅ぼされてから、中央の支配が強まり、東北は都(江戸)への資源や食料の供給基地の色合いを濃くした。戦後さえも集団就職や出稼ぎで労働力を提供し、原発による電力さえも送ってきたのは周知の通り。

安 倍晋三首相は前九年の役で敗れ、伊予や太宰府に流された安倍宗任(あべのむねとう)らの末裔(まつえい)と聞く。血筋にこだわればきりがないが、千年の 時を経て、東北の苦難の時に国のリーダーになったのは縁ではないだろうか。東北の未来を託せるビジョンやプロジェクトを打ち出してほしいと期待するのは記 者だけではない。(盛岡支局長 原圭介)

 

ILCルート上の3市と盛岡市 東北推進協に13年度加入

河北新報

国 際協力で建設される超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の岩手県南部・北上山地への誘致に向け、想定ルートが通る岩手県奥州、一関、宮城 県気仙沼の3市と盛岡市は新年度、東北の産学官でつくる東北ILC推進協議会に加入する。3市は今月、それぞれ講演会などを開き、誘致機運を高める。

ILCは全長31キロの地下トンネルに設置する線形加速器で、奥州、一関両市を通る。最大50キロまで延長した場合は気仙沼市の旧本吉町地区まで届く見込み。
3市と盛岡市は、北上山地と九州の脊振山地との間で今夏、国内候補地が一本化されるのに向け、東北ILC推進協への参加を決めた。それぞれ新年度一般会計当初予算案に負担金を計上した。推進協の会員は現在、東北6県や仙台市、各大学、経済団体など66団体となっている。
奥州市は9日午後1時半、江刺体育文化会館ささらホールでシンポジウムを開く。高エネルギー加速器研究機構(KEK)の横谷馨名誉教授が講演し、小沢昌記市長、千田精密工業取締役、高校生らがILCと地域づくりを討論する。
一関市は25日午後2時、ホテルサンルート一関で企業を対象にしたセミナーを、気仙沼市は20日午後1時半、市地域交流センターで講演会を開く。ともに KEKの吉岡正和名誉教授が講師を務める。気仙沼市では昨年12月に「ILC庁内連絡会議」を設置して以降、初の関連行事となる。

◎岩手県議会が誘致決議

岩手県議会は6日の2月定例会本会議で、「国際リニアコライダー(ILC)」の東北誘致を国に求める決議案を賛成多数で可決した。
決議は、ILC誘致を「東日本大震災で被災した東北の真の復興と再生を象徴する大規模なプロジェクト」と位置付けた。国に県の北上山地への誘致を正式決定するよう求めるほか、議会が実現に向けた活動を推進するとしている。
共産党は「国と自治体の財政負担が明確になっていない」として退席した。