受け入れ態勢の構築を聴取 県ILC推進協がOIST視察

岩手日報

【沖 縄県で報道部・及川純一】超大型加速器・国際リニアコライダー(ILC)の東北誘致に向け、九州・沖縄地方を視察している県ILC推進協議会 (会長・元持勝利県商工会議所連合会長)のメンバー16人は24日、沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学(OIST)を訪れた。世界最高水準の研究を目 的に創設された同大のキャンパスづくりや外国人研究者らの受け入れ態勢構築などについて聞き取りし、ILC誘致後のまちづくり構想の参考とした。

OIST は2011年11月開学。米スタンフォード大の線形加速器センター(SLAC)の所長を務めた物理学者のジョナサン・ドーファン氏が学長 で、博士課程の脳神経科学や生態学、物理学など45の研究ユニットで構成される。約70ヘクタールの敷地は海岸近くの丘陵を造成した。

100%政府予算で運営され、学内の公用語は英語。46人の教員のうち31人が外国人で、昨年9月に入学した博士課程の学生は18カ国34人で日本人は4人。世界の頭脳を集めていることが大きな特色で、ILC誘致に参考となる点が多い。

 

次世代の国際直線型粒子加速器ILCとCLICの組織が合併してLCCが誕生

マイナビニュース

ネ クストLHC(大型ハドロンコライダー)の国際素粒子物理プロジェクトである直線型衝突加速器「国際リニアコライダー(ILC)」と「コンパク ト・リニアコライダー(CLIC)」は2月21日、公式に1つの組織である「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」に統合されたことを発表し た。両加速器は、欧州合同原子核研究機関(CERN)のLHC実験の結果を補完することに期待がかかる、建設計画が進行中の直線型粒子加速器だ。

LCC は今後、ILCとCLICの2つのプロジェクトを1つにまとめ、世界各地で行われている加速器および測定器の研究開発活動を調整していく役割 を担うこととなる。LCCのディレクターは、前LHCプロジェクト・マネジャーのリン・エバンス氏が担当する。また、LCCの副ディレクターには、東京大 学 数物連携宇宙研究機構(カブリIPMU)の村山斉氏が就任した。

LCCには、遂行される研究領域に対応した3つの下部セクションが設 置されている。「ILCセクション」は、米ブルックヘブン国立研究所のマイク・ ハリソン氏が、「CLICセクション」はCERNのスタイナー・スタプネス氏が、また「物理・測定器セクション」は東北大学の山本均氏が指揮を執る形だ。

ま た、LCCを監督する新組織「リニアコライダー国際推進委員会(LCB:Linear Collider Board)」の委員長には、東京大学の駒宮幸男氏が就任。LCCとLCBの構成委員は、フェルミ国立加速器研究所のピア・オドーネ氏がが委員長を務める 国際将来加速器委員会(ICFA)によって指名された。

両加速器の建設の開始時期に関してはまだ明確にされていないが、科学コミュニティでは、さまざまな衝突反応を生成することによって、LHCからの実験結果を衝突加速器でより詳細に研究すべきとの、コンセンサスが取れている状況だという。

両プロジェクトは、この後もそれぞれの研究開発活動を継続していくが、測定器やインフラ開発、土木建築など、両者に共通する研究・開発領域においては協力して活動し、その相乗効果を追求していく形になる。

ち なみに両プロジェクトは、現時点で異なる進捗状況にある。ILCセクションは2012年に技術設計報告書の草稿を完成させ、一連のレビューを経 て、プロジェクトコストを含む最終版を2013年6月に出版する予定だ。実際の建設に備えた準備活動と、加速技術のさらなる進展および設計の最適化が進め られていくことになる。

一方のCLICは2012年に概念設計報告書を発行し、数年の内に、プロジェクトの実現可能性を示す技術設計報告書を発行する予定となっており、新たなビームの加速方式の研究を進めていくとしている。

またLCC下部セクションの1つである物理・測定器セクションでは、最新の測定器技術と概念の研究に集中して取り組むと共に、ILCとCLICが共同で研究を進めることによる、測定器技術向上の相乗効果を追求するとしている。

こ のほか、バリー・バリッシュ氏がディレクターを務める「ILC国際共同設計チーム(GDE)」と、その観測組織である「ILC国際運営委員会 (ILCSC)」は、正式にLCCとLCBに役割を委譲した形となるが、6月のILC最終版技術設計報告書の完成までは、共同でリニアコライダー活動の推 進を行う予定だ。

LHCが観測したヒッグス粒子(と思しき)新粒子の質量は126GeVで、ヒッグス粒子であるかどうかを確かめるために は、その性質の詳細な精密測 定が必要とされている。しかし、その精密測定を行う場合、LHCだけでは新粒子の詳細測定には限界があるため、ILCやCLICが必要とされることとな る。ILCは電子と陽電子を衝突させるため、より明瞭な衝突反応を得ることができるため、新粒子や、今後LHCで発見されることが期待されるであろうさま ざまな現象について、より詳細に精査することができると考えられているためだ。

なおILCは、現時点で技術的にも組織的にも最も進んだリ ニアコライダー・プロジェクトであり、計画開始当初より、1000人を超える世界の科学者 らが設計に取り組んでいる。大型の国際プロジェクトのため、段階的な建設が検討中で、最初は設計エネルギーの半分でヒッグス粒子を大量に生成する「ヒッグ ス工場」の役割を果たす加速器として運転を開始し、新粒子の精密測定を目指す計画で、その後、設計エネルギーを500GeVに拡張し、最終的にはエネル ギーを倍増させ、さらなる未知の物理現象の解明への可能性を開いていく予定ながら、まだ建設予定地も決定していない状態で、日本でもILC誘致の機運が高 まっているという。

オドーネICFA委員長は今回の組織統合について、「次世代のリニアコライダーの設計および建設に向けた活動が、国際 協力によって次のステップへと 進んだことを目にして喜ばしく思っています」と語っているほか、エバンス・LCCディレクターは、「LHC実験が最初のエキサイティングな発見を発表した 今、次のプロジェクトを軌道に乗せるための力添えができることを楽しみにしています。私は加速器製造の専門家です。日本ではILC活動に対する強力なサ ポートがあり、間もなくヒッグスを大量に生成する加速器のためのトンネルを日本で掘り始めることができるのではないかと期待しています。同時に、CLIC 加速器の技術開発も押し進めていく予定です」と、述べている。また、駒宮LCB委員長も、「ILCとCLICの2つのプロジェクトの目的は類似している が、異なる加速技術を用いており、さらに計画の成熟度には差があります。LCBの委員長として、両プロジェクトの進捗を見ることを楽しみにしています」と コメントしている。