東 北の産学官が岩手県南部の北上山地に誘致を目指す超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」計画で、研究者の国際グループは22日、日本国内に 建設する場合の建設費が約8300億円になるとの試算を発表した。世界の研究者グループが建設地を日本と想定していることが明らかになった。
昨年12月に加速器の詳細内容をまとめた技術設計報告書が完成したのに伴い、2007年発表の概算コスト(約8000億円)を見直した。07年は建設地を想定していなかったが、今回は日本を前提に試算した。
全長31~50キロの地下トンネルを2本から1本にするなどコスト削減が可能になった部分と、プロジェクト参加国の物価上昇に伴う物資調達コストの増加など技術面、経済面の変化を考慮した。
その上で日本がトンネルを建設し、欧米などが加速器を製造すると想定。国内2カ所の候補地は、北上山地、九州の脊振山地とも山岳地帯のため、トンネル工事費が増えることも踏まえて約8300億円とした。想定為替レートは1ドル=100円、1ユーロ=115円。
試算はカナダのバンクーバーで22日にあった研究者の新たな国際推進組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」の発足式で示された。
LCCの責任者には、欧州合同原子核研究所(CERN、スイス)の円形加速器実験を率いたリン・エバンス氏が就任。エバンス氏は「胸躍る夢のプロジェクトが、日本で実現されることを期待している」と述べた。
ILCは線形加速器で正面衝突させた電子、陽電子の反応を調べて宇宙の起源を探る。国際協力で世界に1カ所建設し、費用の半分は建設国が負担する。