佐 賀県の古川康知事は13日、山本一太科学技術担当相を訪れ、国際研究チームが建設を目指している物理学の大型研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」 を、福岡・佐賀両県にまたがる脊振山地へ誘致することに協力を求めた。日本では岩手県も北上山地への誘致を目指している。
ILCは、長さ約30キロの直線状のトンネル内に設置する次世代の加速器。電子と陽電子を衝突させて、宇宙誕生のビッグバン直後の状態を再現し、宇宙の成り立ちを探る。日米欧の科学者が建設を目指しており、建設費は8千億円とも言われる。
米国のシカゴ近郊、スイスのジュネーブ近郊も建設地に想定されている。
岩手県が「いわて復興加速予算」と呼ぶ2013年度一般会計当初予算案は、過去最高だった12年度当初をさらに上回る規模となった。県復興基本計画の基盤復興期間(3年)の最終年度として、社会資本や住環境の整備など基盤の再建に力を入れ、復興を実感できるようにする。
達増拓也知事は12日の記者会見で「基盤復興の事業をしっかり進めるのに加え、中長期的な事業に12年度以上に力を入れていく予算にした」と強調した。
進捗(しんちょく)が3割程度にとどまるがれきの処理に1286億円を充て、計画通り14年3月の完了を目指す。災害公営住宅で暮らす高齢者らの見守り支援は2億円を盛り込んだ。
沿岸の3県立病院の再建では、設計や用地取得に15億円を確保。被災者の医療保険、介護保険などの利用者負担の減免を4月以降も継続するため、市町村に補助する。
中長期的な事業では、新たな三陸地域を創造する「三陸創造プロジェクト」として、超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」誘致に向けた調査研究に3400万円、洋野町の洋上風力発電の研究に5000万円を組み入れた。
県の総合計画に掲げた「希望郷いわて」の実現に、希望郷創造推進費5億円を確保。再生可能エネルギーの戦略的推進、いわてブランド再生など19事業を展開する。
◎復興の先、青写真示す
【解説】もはや復旧段階ではない。岩手県の2013年度一般会計当初予算案で、災害復旧事業費は減少に転じた。県復興基本計画は新年度で「復興の土台となる」最初の3年間を終え、本格復興期間に入る。
達増拓也知事は「復興はただ元に戻すだけではなく、地域の未来のあるべき姿に追い付いていかなくてはいけない」との持論を持つ。今回の予算編成では、復興の先の岩手の姿をある程度、示したと言える。
例えば、超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の東北への誘致や、洋上風力発電など沿岸の地域資源を生かした国際研究拠点の形成。達増知事の肝いりで新設された希望郷創造推進費枠には、長期的な戦略に基づく調査研究費が多く盛り込まれた。
背景には、県が実施したアンケートで、沿岸を離れた被災者の3割が古里に戻るつもりがないと答えた現実がある。震災前から既に人口流出の続いていた被災 地に呼び戻すには今後、これらの青写真を着実にハード事業にまで結び付けなくてはならない。いかに結果を出すか、達増知事の手腕が問われる。
予算編成が進む中、政権交代があった。公共事業を増やす自民党に対応し、県は通常分公共事業費10%削減の当初方針を事実上、撤回した。13年度当初予 算案では14.6%減っているが、数百億円規模の本年度2月補正予算案に削減分を盛り込み「15カ月予算」とするという。
震災対応経費のため震災前と比べ予算額がほぼ倍増した結果、2011年度は歳入歳出決算で既に2778億円が本年度に繰り越されている。職員不足の中、さらに膨らんでいく予算が適切に執行されるのかにも注視する必要がある。(盛岡総局・菊間深哉)