風土計

岩手日報

 一昔前なら熱海や宮崎。少し前は海を越えてハワイやサイパン。今なら世界どこでもか。新婚旅行の定番は近い将来に大気圏も越え、宇宙になりそうだという

▼高さ10万キロの「宇宙エレベーター」が現実味を帯びているからだ。ロケットは時代遅れになり、エレベーターで宇宙に行く日が来る。動かすのは重力と電力。大量の燃料を積むロケットより飛躍的にコストが安い

▼既に理論は確立され、各国が技術開発を競い合う。軽くて強い材料が課題だったが、日本発の新素材カーボンナノチューブが道を切り開いた。「30年後にはできる」とドイツ・マインツ大の斎藤武彦教授は断言する

▼1日まで沿岸の学校で開かれた斎藤教授の科学授業は、楽しい話の連続だった。金髪の原子核物理学者は子どもの心をつかむ名人だ。この世で最も小さい素粒子や原子核の研究が、壮大な宇宙の誕生を解明するのは大人をもワクワクさせる

▼国際リニアコライダーの国内候補地が夏までに一本化される。斎藤教授には「声が大きい」九州が有利に映るようだ。万事控えめな岩手・東北には「被災地の子どもたちのため、情に訴えてでも頑張れ」と気合を入れた

▼世界に優秀な人材を送る岩手が逆に人を引き込む好機だろう。宇宙新婚旅行の時代は、もう被災地ではない。科学の一大拠点として迎えたい。