<確かな一歩> ILC誘致 ナンバーワンを岩手で

岩手日報

「世界一でないといけないのか。2位では駄目なのでしょうか」。2009年の政府の事業仕分けで話題になった蓮舫参院議員の発言は、今も記憶に新しい。

予算の無駄を省くのが本意で、国民にもある程度の理解はあった。だが、先端分野で世界としのぎを削る研究者の士気はかなり下がった。

風向きが一変したのは山中伸弥京都大教授のノーベル賞だろう。山中氏が取り組んだ基礎研究は直ちに役立つわけではないが、今後は医療を飛躍的に向上させる。

本県の北上山地(北上高地)が候補地の超大型加速器・国際リニアコライダー(ILC)も同様だ。

電子と陽電子をほぼ光速でぶつけ、宇宙誕生直後の状態をつくり出す。すぐには社会に役立たないが、宇宙や生命の謎に迫る壮大な実験に思いを致したい。

ILC誘致で2013年は大事な年になる。7月までに九州の脊振(せふり)山地との間で国内候補地が一本化される。

誘致判断の材料として、5月まで候補地の地質調査が行われる。既に東北大と県の調査で北上山地の安定した岩盤は適地との結論は出たが、国が最終確認する。

国際共同チームが先月、ILCの設計を発表し、技術的に日本での建設も可能になった。地元は積極的に受け入れる姿勢を見せており、誘致の障害は少ない。

あとは政府の決断にかかる。国としての立候補を促すため、環境をさらに整えなければならない。

民主党政権でILCの優先順位は低かった。建設国には4千億円もの重い負担があるためだ。野田佳彦前首相が誘致の条件に挙げた「国民の理解と支持」も課題となる。

一方で自民党は、衆院選で「科学技術基盤を根本から徹底強化する」と公約した。基礎研究を重視する宣言として期待したい。

与謝野馨元経済財政担当相、鳩山由紀夫元首相ら本県誘致の「応援団」が政界を去り、国会議員の新たな理解者を増やす努力も求められる。

誘致の正念場にILCを東北、岩手に建設する意義を再確認しておきたい。

既に日本の加速器技術は世界一の水準にある。これを確固たるものにして、素粒子物理の分野でも世界をリードし続けなければならない。

経済効果も大事だが、何よりナンバーワンの研究が震災で傷ついた岩手で行われることだ。次世代を担う子どもたち、若者たちが、ここに住むことの誇りにつながる。

研究者の間では、北上山地は世界6カ所の候補地の中で有力とみられている。自信を持って誘致を加速させたい。